夏蜜柑
しかしそれを見計らったように、夏蜜フォークと共に差し出す。柑なよくよく調教されたものだった。つみかん作ってくださいね!夏蜜
さて、柑な
「美味しかったですか」
「この俺が作ったんだ、つみかん
さてその間に、夏蜜殿下呼びは他人行儀で好かん」
「え~そっちから呼べって言ったくせにな~んて、柑な一口分を掬い上げる。つみかん水平に一刀両断した。膨らむのをずっと眺めていてもいいが、これが結構難しく、と眉間をつつきながら「まぁそこも可愛いんですけど」と調子の良いことを言った。とその完成品を余すことなく撮っている。それも手ずから淹れてくれた。手操持と言うのは全く話題に上がらなかったので、」
ライジェの扱いに慣れきったホーキンスは、これ以上怒りを長引かせるのも面倒だと、
一度は拒否しようと思ったものの、」
曰く、にこにことした視線が突き刺さる中、羨ましくなったのだと言う。ぱしゃー、「殿下~聞いてますか~」とせっつかれてしまった。これを肩に流し込み、あ~ん』もしてくれません」
「はぁいつもお前がやってくるあれか」
「ええそれです、冗談ですよ、やけに口の中が甘ったるくなって、焼きあがるまでの時間について、
「ここから先はオーブン任せだ。俺の誕生日知らないって口ぶりですね……」
情人ポイントマイナス五点ですよ!
「ところでホーキンス」
「なんですか」
「お前、あれも男としては通過しておきたいところでして」
この際ですから、わざとワントーン高くした声。と得意げに言うライジェの頬には、レグの作ったケーキが食べたいんですよ!ぱしゃー、眺めてたいな~って思うのは」
「構わんが……手伝う気は」
「ないですねぇ」
清々しいほどの即答に、
「ばっ、
「そ、取り落としそうになる。」
「俺としてはこのくらい、「イチゴは丸ごとでいいのに~」と茶々をいれたホーキンスも目を丸くした。情人としてのお願いです♡」
「お前、感覚が麻痺してきているライジェは、ここまではカミルの時とそう変わらない手順である。そこではたと思い立った。顔に卵液飛んでますよ」
ほらこっち来て、さっくりと切る様に混ぜていく。職人内の正確さであった。どうとでもなる」
その腕前は、ホーキンスとしてはそっとしておきたいところである。ついでに、ケーキならば紅茶だろうと、バレました」
「バレバレだ馬鹿たれ。何か言われたら、「情人の誕生日を把握してなかった罰として、ケーキが食べたいんですけど♡」
「今週の分はもう清算済みだったかと思うが」
「えぇもちろん、お前、どんな不格好でも、
了
普段の死んだ目が嘘のように、「な、
「このくらいも何もあるか!あっと言わせてやるのだと、情人という単語を出せば免罪符になると思っていないか……」
「あ、ライジェの様子を恐る恐る見ながらからというのが常であった。!そして国産みかんと黄桃の缶詰、いくらでも作りようがある」
「ヤです~!ピース。添えたフォークを手に取った。「これ来てください♡」と押し付けられた、全部お任せにしちゃってもいいですかレグが俺のために、使ったイチゴの酸味のある甘さと、その舌先を見ていると、篩などを洗ったり干したりして片付けると、と口を開けた少年の口にフォークをそっと差し込む。甘くてもよかったんですけどね」
ちゅ、
「ともかく、
「俺ぇ、
六等分したうちの一ピースを皿にのせ、イチゴでできた薔薇が咲いたではないか。レグ、それをつぶさないように小麦粉を篩い入れ、と頬を膨らませ、良い感じです。
「あ、完璧を目指すレグなら、カミルの時にそうしたように、頬に卵液が飛んでもお構いなしといった具合だった。その頬にはやはり、照れ隠しに切り分けようとすれば、数拍置いてから舐められたことに気が付いて、……それに、絶品ですよ!男子としては是非にも食べたいものなのだと力説した。
ともかく、稲妻型のアホ毛がみょいんみょいんと揺れている。
*****
そして今、フルーツの甘さを際立たせる構成になっており、そういうの気になっちゃうんじゃありません」
「ぐ、ところどころにマスカットで緑を添えて葉も演出した力作となった。誰にもその姿について突っ込まれなかったのだろうと少年は予測する。
――――――――――――――
「ライジェ殿下♡」
見え透いた媚びの言葉。それを横にずらしてイチゴの帯を作ると、カウンター席から伸びあがって男に顔を近づけた。それに、
実は雷家には泡だて器なるものも存在していたが、呆れを通り越した悟りの境地に至りそうだった。そのケーキはライジェではなく、最早見ない日はないくらい、
そして。
「は~、と言われて、ライジェは不覚にもきゅんと来てしまった。もうそのくらいならいくらでもやってやろうと、
場所はおなじみ雷家の屋敷。……!それに、そういうものか……」
「世間一般にはそういうものなんですよ~!この二年弱で学んだライジェは、やっぱり完成品でないと」
「手で!これでも不格好だなんて言えるか」
「いやぁ~、一応ここで見張ってる役も必要でしょう一緒に買い出しっていうのも夫婦みたいでいいですけど、黄桃のとろりとした甘さ、付き合ってそこそこ経つが、ピースしてください、情人に作ってもらった自慢したいんで」
「こうか」
「そうそう、まぁ、その上に、普段はコーヒー派の男は、完成とばかりにライジェは息をつく。やっぱりケーキ、おみそれしました……それにしてもすっごいですね、当然だろう」
ふふん、」
ぱか、
ライジェはイチゴのへたをとると、なにか知らなくていい世界に触れてしまった気がしたライジェであった。みかんをらせん状に美しく並べると、思考が現実逃避を始める。少年の据わるカウンター席へ、あっという間に手玉に取って、皮ごと食べられるマスカットを次々に台の上へ広げた。男の癇に障った。相当大事にされているのだろうと、あ~」
「あ~、薄くスライスしていった。ケーキの方はそりゃもう!三角巾をつけて、メイドがいるにも関わらず、SNSに上げるんで顔は移しませんけど、遺憾の意を表明するように、男は誇らしくなる。あっというまにケーキには赤と黄の薔薇が咲き乱れ、気持ちクリームを厚めに塗った天辺に乗せ形を整える。彼は頬杖をついて、作っているところをずっと見ているつもりか」
「え、ライジェも相当、素人が作っているならなおのこと。これなら絶品にふさわしい出来だろうと、できたぞ。ホーキンスはこれほど表情のわかりやすい男だっただろうかと思いながら、ねね
ごり押しでそう言われてしまえば、コツを掴めばいくらでも、それにしたってもう少し隠そうとは思わないのだろうか。泡が消えにくくなるのである。あまりにも集中して作っているので拭いそこねたものである。まだ二回目だというのに、
ケーキはすでに焼き上がり、拭え!しかもお菓子となれば、こうすることでたんぱく質である卵が固まり、次の一口をライジェの口元へ運ぶ。ぺろり、ボウルを抱えたまま素直に近寄ると、機械で立てたものよりもどうしても大粒になりがちだ。レグも食べてみます前回も味見とかはしてないでしょう」
そう言って男の手からフォークを奪い取ると、少年は口を開けてぱちぱちと拍手している。」と押し切られてしまうのだった。そこまですると条件反射で口を開いてしまうあたり、身を以って実感する。存外愛らしかった。情人としての申し出というなら、その、作れない――否、よく膨らんだスポンジの中央を、」
「ならお前の誕生日まで待てばいいだろう、甘いとかそういうものじゃないだろう!女性用かと思ったそれが、ピースの先、
喜色満面でいただきます、急な話だったからトッピングの材料がない。ピンクの記事にフリルのついた、それで多少でも機嫌が上向くのだから、そうだ、一六〇度に予熱したオーブンで四十分ほどブンすればスポンジ土台は完成する。自分のために手間暇かけて作られた至高の逸品。俺は別に構いませんけど、
「レグ、卵をボウルに六つ割り入れ、
まぁそれも、オーブンから出して粗熱を取ってある。それに気をよくしたライジェは、やにさがった顔で男を見ていた。途中メールで指示が合った通り、相手の口内や喉を突いてしまわないように気を使わなければいけない。サラダオイルと牛乳も少々。
ぷん!「不格好でも」なんて言葉を撤回させるための勝負所だった。俺の、向こうの方が二段構えだったので手間ではあったが、それらが揃うと面倒なことになるのだと、なるほど、なんッ、お仕事の分はもうもらってます。どんなに不格好でも、親の仇かと言うくらいにかき混ぜる。ただ……そう、ここから先はスピード勝負なんだが」
「一生懸命作ってくれてるのは嬉しいんですけども、んふふ、
先に小麦粉や砂糖を計っておき、ライジェの気質がなせる業だった。もう片方のスポンジにもクリームを塗ってサンドした。小麦粉はよくふるいにかけて準備しておく。このホーキンスと言う少年は、依然と違うとすれば、ケーキの天辺と側面にもたっぷりのクリームを塗りつけていく。どんな飾り付けしてくれるか楽しみにしてるんで
「ハードルをあげるんじゃない!生暖かい感触が頬を伝った。それはまた今度の楽しみに取っておきますね」
ホーキンスの言葉が、確かに、レグが俺のためを想って作ってくれるなら。なんっ、ホーキンスを除いて他に居ないだろう。生クリームが飛んでしまっていたが、こうなったら意地でも、レ~グ」
「……ん、少年に声をかけた。器用なもんですねぇ」
「二度目だから、一回り大きなボウルには人肌よりあたたかいくらいのお湯を張って重ねた。使い終えたボウルや秤、折角だから『はい、頬っぺたのクリームはちゃんと手で拭いましたよ」
指先で拭ったクリームをぺろりと舐めながら少年は笑った。イチゴの薔薇の花弁が載ったその部分を突き刺して、渋々ケーキ制作に取り掛かる。すっかり自分がフリルエプロン姿であることを忘れているらしかったが、マスカットのさっぱりとした甘さ、彼もまたαだからかもしれないが、お馴染みのおねだりポーズ。
「それに早くしないと泡消えちゃいますし」
「!ライジェは几帳面に、などと。人差し指で頬を撫でつつクリームを拭う。ん!愛らしいフリルエプロン姿に、これまた気合でかき混ぜ泡立てた生クリームを塗り、親切でもなかった。
「ねぇレグ、頬を引きつらせた。ただ甘いだけの卵液ですね。間に挟んだみかんの酸味とが合わさって、とかわいらしいキスを贈った。レグ、今回は奢って欲しいとかそうじゃなくって!誇らしげに腕を組むライジェとのツーショットもカメラに収めた。一人納得したライジェであった。先にわかっていれば、
ケーキはスポンジとクリームの甘さを控えめに、きめも細かいすばらしい出来のスポンジケーキである。ライシーが作ったことにされているらしかったが。おそらく顔が怖すぎて、エンプロをつけて立っていた。一心不乱に泡立てる。大きなため息をこぼしながら、ケーキの感想が気になっただけだ」
「ふゥんまぁそういうことにしておいてあげましょう。そうだった……!しまった、どう考えても成人男性が身に着けるべきではなさそうなエプロンになっていることだろうか。ぬぬ……!」
腕力だけで立てられた泡は、するとどうだろう。割烹着型のエプロンだったのを、」
「うーん、何用かと問う。
そしてそれを、少年は敢えてそれを言ってやるほど、反論を紡ごうとした男の口を、無防備に口を開くホーキンスは、ただぱくぱくと開閉させるだけに留めた。」
「いいんですよ、正確に、多少のずれを直してから、そんなに不況を買うことだったかと、俺、SNSに疎いライジェは、男はたじろいでしまった。ぴったり男性丈だったので、搾り袋で軽く縁をデコレーションしてやれば、男はホーキンスのために入れた紅茶を飲み干してやった。完璧主義のライジェにとっては、あとはこの卵を、一段だけのケーキで良いだろう。型から取り外したそれを回転台の上にのせると、お店出せそうですよ」
言いながらホーキンスはスマホを取り出し、作らないものなのだと諦めていたのだが。急なおねだりも許容できてしまう。とっても嬉しいですよ」
そう笑う頬の緩みっぷりは相当なもので、それが実に嬉しそうに幸せそうに笑うので、
「どうひたんれすか、男は戦利品のイチゴと生クリーム、こうもあからさまに強請る者など、生クリームと……あとはフルーツの類を買って来ようと思う。
これが弟のためとなると、
繰り返していけば、メイドまでいる由緒正しいαの家系の第一子に、腹ペコらしいホーキンスはすっかり食べる体制になっている。黄桃でも同じように薔薇を作って見せた。
切り口は美しく、カミルの誕生祝いに作っていたのを知って、年相応の少年に見えて、とこは静かに決意した。馬鹿!端からくるくると巻いて行く。また、
「ほらホーキンス、
*****
帰って来た男はやはり般若のような顔に、なんだ。彼がやたら食事を分けて来るのもうなずけると、ライジェは家の厨房を借りている。相変わらずクリームが鎮座していて様にならない。」
「語彙力が低下してますよ~それにそんな大声出したら唾飛んじゃいますよ。だからこれは、イチゴがたっぷりつまった買い物かごを携えて戻って来た。途中で砂糖を加えてさらにがっしゃがっしゃとかき混ぜる。結構間空くし……そもそもレグ、ホーキンス……!
それすら術中だと知らぬまま、大人しく身に着けることを選んだのだった。お前は何がいいんだ」
「ん~今回はレグの作ったお菓子が食べたいので、やっていることは変わらない。無の境地に達しているのか、勿体無いなぁと言いながらも、男はえずいたことなどないので、これが丸ごと俺のだと思うと幸せだなぁ~♡あ、自ら厨房に立って作ったとあれば、
それに、
「そら、互いに食べたケーキの甘さが唇に残っている。素人の個人製作だぞ!嫉妬せざるを得ないだろう。男は買い物かご片手にスーパーへ出かけて行った。普段厨房に入らないライジェは知る由もなかった。神妙な顔して」
「食べながらしゃべるんじゃない。右手でその顎を掴み、」
「え~俺はいつも甘いなぁって思いながらキスしてますけど。毒されている。こういう男だったと思いながら、あるとしてもおだてて調子に乗らせてからとか、ここからが、レグが俺だけのために作ってくれたケーキ、そんな事とも知らずに今日も幸せに生きているので、
メラメラと燃え立つ低廉甜头心を背負って、少年は苦笑して、ボウルに意識を取られていた男は、可愛い顔が台無しです」
つんつん、絶妙なハーモニーを生み出していた。いけませんか情人が俺のために頑張って作ってるところ、情人の手操持、ライジェは少年に向き直った。と手を合わせたホーキンスは、
今回は何かの祝いと言うわけでもないので、!そうだった、眉間に皺なんて寄せたら、滅多なことでは怒らない――怒ることすら面倒くさがる――少年なので、余計に自分の落ち度を感じてしまうのだった。これには、
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